自然薯は古来より山菜の王様として親しまれてきた、野生種の山芋です。今回は自然薯栽培の方法や育て方のコツ、秋~冬にかけて収穫できるむかごや、芽出しの方法などについてご紹介します。
自然薯(じねんじょ)とは
自然薯はヤマノイモ科ヤマノイモ属、日本原産のツル性多年草です。古来から日本の山々に自生し、天然の物を収穫し珍重されてきました。
一般的によく知られている細く長く伸びていく自然薯は、長さが2~3mになるものもあります。秋にはむかごを収穫することができますよ。
自然薯にはアルギニンと呼ばれる酵素のほか、一般的な長芋に比べて約2倍の食物繊維が含まれており、カリウムやミネラル、ビタミンや鉄分など様々な栄養素が豊富です。
自然薯は粘りが非常に強いので、すりおろしてだしを加えトロロにすると絶品です。調味料や卵を加えてお好み焼き風にしたり、お味噌汁に入れたり、つみれにするのもおすすめです。
和食だけでなく、グラタンやワッフルなどの洋風メニューにアレンジして楽しむこともできます。
むかごとは
自然薯は地上部分に沢山のツルが枝分かれし、葉が生い茂ります。葉の付け根につく小さな丸い粒が、むかごです。むかごは鉄分やカリウム、マグネシウムなどを豊富に含んでいます。
お米と一緒に炊いて、むかごご飯にすると絶品です。素揚げにしたり、茹でたむかごに軽く塩を振っていただくのもおすすめです。
プランター栽培NG!自然薯の栽培方法
自然薯は、芋となる部分が土の中で長く伸び、土を深く耕しながら栽培します。露地栽培は可能ですが、自然薯が長く伸びるスペースが少ないプランター栽培には向いていません。
自然薯は芋をカットして植え付ける方法と、むかごから栽培する方法があります。種芋の植え付け時期は3月下旬~5月中旬で、収穫時期は11月上旬~3月上旬頃です。
葉やツルが生い茂るので支柱やネットを利用して育てます。自然薯は細長い形状なので、収穫しやすいよう塩化ビニール製のパイプや波板を使って栽培しましょう。
水やりをする必要はありません。しかし梅雨明けに土が乾燥し過ぎると自然薯が傷んでしまうため、株元にワラを敷いておきましょう。
土作りと準備物
植え付けの2週間前に菜園に、シャベルで深さ80cm以上の穴を掘り、掘り上げた土に苦土石灰をまいて、しっかりとかき混ぜ埋め戻します。
植え付け1週間前には元肥(最初に施しておく肥料)をまき、土に空気を入れるように混ぜ込んでおきましょう。
パイプ栽培
自然薯栽培専用パイプを利用します。またパイプの中に入れる赤土や、真さ土(花崗岩が風化した砂)、目印用の支柱を準備してください。
パイプのスコップ部分を利用し(かき氷を食べるスプーンストローをイメージ)、土をすくうようにしてパイプの中に土を入れます。
パイプが土でいっぱいになったら、菜園にシャベルで深さ30~40cm・横幅25cm程度の埋設用の穴を掘ります。
パイプのスコップ部分が上に向くようにし、10~15度の角度を付けて埋めていきます。パイプとパイプの間隔は30cmほど取ってください。
パイプのスコップ部分に目印用の支柱を挿したら、上から20cm程度土を盛り、カマボコ状の畝(うね)を作っておきましょう。
波板栽培
目印用の支柱と、縦210cm×横70cmの市販の波板を準備し、波板を4等分にカットします。菜園に深さ20cm・横幅20cmの穴をスコップで掘っておき、カットした波板を穴の中に斜めに入れて、土を10cm被せます。
その上にもう1枚波板を40cm後ろにずらして配置し、土を10cm被せます。波板と土をずらしながら挟むことを繰り返し、最後に波板の上から土と完熟堆肥を混ぜたものを10cm上乗せします。波板の先端から5cm下の方向に、目印の支柱を立てておきましょう。
種芋orむかご
自然薯は主に種芋(切り芋)から育てる方法と、むかごから育てる方法があります。
種芋から(芽出し)
市販の無漂泊芋を、種芋として使用します。種芋は、1つが70~80gの重さになるようにカットして、切り口を乾燥させておきましょう。
切りイモから栽培する場合には、芽出しをする必要があります。芽出しをする際には市販のトロ箱を利用し、この中に砂かオガクズを入れて、種芋が隠れる程度に土をかぶせ育成します。
トロ箱を使用しない場合は菜園にかまぼこ板状の畝を作り、アーチ状のフレームとビニールシートを活用しましょう。
土が軽く湿る程度に水やりをし、気温25~28℃の温度に管理しながら育てましょう。約1ヶ月程度で種芋から芽が出てきますよ。
むかごから
大粒のむかごは翌年の春まで保存しておくと、種として利用できます。保存しておいたむかごは3cmの深さで埋め、土をかぶせ、更にその上に堆肥をのせて育てます。
むかごの間隔は5cmほどあけてください。こまめに水やりをして、土が適度に水分を含むように管理します。
6月下旬・7月中旬・8月上旬に有機肥料を施します。むかごは臭気を吸収する性質を持っているため、化学肥料や農薬、畜糞などは利用しないようにしてください。
11月頃に成長したむかご(芋)掘り起こします。一度掘り上げた芋は、ひとまとめにして再び20cmの深さに埋めて保存します。むかごから栽培すると収穫するには3年程かかります。
植え付けをしよう
案内用の支柱の脇をシャベルなどを使って約5cm掘り起こし、細長い溝を作ります。溝の中に成長した種芋を入れ、パイプに対して水平になるように植え付けましょう。
種芋の発芽位置と案内用支柱の位置を正確に合わせてから、5cm以上土をかぶせてください。ここで位置をきちんと合わせておかないと、パイプに自然薯が入らないことがありますので気を付けましょう。波板栽培の場合も同じ方法で行ってください。
自然薯の管理について
追肥
種芋を植え付けた後の1回で大丈夫です。畝の頂上から約10cm以上離れた場所・両サイドに市販の自然薯専用肥料を施してあげましょう。
支柱を立てる
地上部に芽が出てきたら畝の端と端に支柱を立てて、間にネットを張っておきましょう。ネットは市販のきゅうり用ネットを利用すると手軽です。
イメージとしては、バレーボールのネットでしょうか…ネットが地面ギリギリの位置まであると考えてくださいね。
マルチ(ビニールシート)を敷く
自然薯のツルが約80~100cm程伸びたら、雨が降った後にマルチを敷きましょう。マルチは白黒マルチを利用して、白い方が上にくるようにしてください。
自然薯は加湿を嫌うため、マルチの頂上をテープで固定するなどし雨水の侵入を防ぎましょう。
除草をしよう
ツルが生い茂りだしたら、株元周辺の除草をします。風通しの良い環境を作ることで、病害虫被害も防ぐことができます。
むかごを収穫しよう
9月~10月頃むかごの収穫をしましょう。むかごは一枚の葉に1つずつつくため、1株でおよそ100個ほど収穫できます。
むかごをツルに付けっぱなしにしておくと自然薯に栄養が行き渡りにくくなるため、必ず収穫をしてください。
湿らせたキッチンペーパーに包み、冷蔵庫で2~3週間保存が可能です。冷凍すれば1ヶ月保存できますよ。
自然薯を収穫をしよう
自然薯のツルや葉が完全に枯れてから2週間後以降に収穫を行います。これより前に収穫すると、自然薯の味も風味も悪く、強いアクが出てしまいますので気を付けましょう。
目印用の支柱を参考にし、パイプや波板の両側をクワなどを使って、傷をつけないように注意しながら優しく掘り起こします。
パイプや波板の端と端を1人ずつが持ち、2人がかりで取り出すと自然薯を傷つけずに収穫することができます。
家庭用の場合、自然薯は食べる分だけその都度収穫するようにしてください。菜園に置いた状態で翌年の3月くらいまでは収穫が可能です。
素朴な疑問Q&A
腐ったり分根した芋になりました
排水性が悪いと植え溝に水分が長期間停滞し、腐敗や分根の原因になります。菜園の状態を今一度確認しましょう。
病害虫はつきますか
病害虫被害のない種芋を使えば、自然薯は元気に育ちます。まれにヤマイモノコガやヨトウムシがつくことがあるので、見つけ次第駆除しましょう。
育成中は株元を除草するなどし、高温多湿を避け、風通しの良い環境づくりを心がけてください。
自然薯栽培のまとめ
自然薯栽培の方法や育て方のコツ、むかごや芽出しなどについてご紹介しましたが、いかがでしたか?
自然薯栽培は準備物は多いものの、種芋を利用すると約半年後には収穫ができ、追肥も1回で良いことが分かりました。自然薯とむかごの収穫を、ぜひご家族で楽しんでみてください。
【中間地】11月収穫 【中間地】4月植え付け 【冷涼地】10月収穫 【冷涼地】4月植え付け 【暖地】11月収穫 【暖地】4月植え付け